富山市ガラス美術館展覧会設営PVを解体新書する 〜デキナイをデキルに変える”諦めない”〜

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ツヨシ

ある有名な家系に生まれるものの、一家離散を契機にアート制作に没頭。 受賞歴ありの障がい者アーティスト。

さて、前回のダメ出しから一夜明けて、社長の注文通りに動画を修正していく作業をしていきます。

「文字を水色に」とのことですが、これが意外と難しい。白や黒、あるいは赤などのテロップはご存じのようによくあるし、なぜそういう色が一般的かと言えば、背景の色がどんなのでも白、黒、赤であれば違和感が出にくいからなのですが、単純に水色にしてしまうだけだと、やはり「なんかヘンな感じ」になってしまいます。

 

さらに、「明朝体で」という指示も実はされており、よく見る太めのゴシック体で白文字とかならやりやすいけど、地味にハードルの高いテロップ指示です。

最終的には、スタイル良く太らせた明朝体を間隔開けて使い、文字の周りに紫の発光エフェクトをかけることで、問題の解決を見ました。
なお、google英語翻訳などを用いて日本語の訳を作ります。ただ翻訳しただけだとおかしい部分もあるので、おかしい文法は自分で訂正をかけます。細かい作業ですが間違いのないようにします(ちなみに動画公開までに2回ほど社長がチェックしており、その際の主な修正指示はテロップのストーリーの流れでした。完成品を見ると、ストーリー仕立てとして通用するテロップになっていることがわかります。動画に「流れ」、すなわち物語性を持たせることは常に重要なポイントです)。

今回の動画では、まず本編を終わらせ、気づかないほどスムーズに最後のシーンに持っていく、そのための仕掛けが必要でした。もともとのテンプレートにはエンディング的な要素は無かったのです。エンディングパートは自作しましたが、うまくシーンを移行するために、「音楽に合わせてライトグレー100パーセントに上げてから、ライトグレーを下げて、用意しておいたシーンを出す」という手法を採用しています。ホワイトにしない理由は映像制作のお約束で、まぶしすぎて目を痛めないようにという配慮です。アニメのテレビ番組の爆発シーンなども、よく見ると白ではなくライトグレーにまで輝度を落としています。ふっと明るくなったと思ったら、BGMがはじける音と同時にスムーズにラストシーンが現れる仕組みです。

一見複雑に見えるエフェクトですが実はそんなに難しいことはしていません。
エフェクトの「ボールアクション」で粒子をまいて、まき具合をキーフレームで指定しているだけなのです。これにより、パーンと弾ける感じができるので、あとは強めのグローや透明度などを組み合わせて料理していくだけです。

動画作品において「文字の美形さ」は極めて重要です。イラストレーターやフォトショップなどでお馴染みの文字レイアウトのセンスが、動画でも同じように問われます。ここさえバシッと決まれば、だいたいなんとか見える作品になるという部分です。地味なテクニックこそ重要。動画は派手さで攻めようとすると失敗します。地味さで堅実に相手を落とす、地味派手の勝利を目指しましょう。

合成していくとこのようになります。ぽいじゃん、ぽいじゃん。

締めの「つづく」のテロップ。使ったエフェクトはグローのみですが、移動に関するキーフレームに「イージーイーズイン、イージーイーズアウト」を適用してぐにゃ〜と動く感じを出しています。インは導入に、アウトは終わる時に使うとよいです。

このようにそれなりに複雑なプロジェクトは、実際に書き出してみると細かいおかしい部分がよく見つかるものです。せっかく長時間レンダリングして書き出したのに、ミスが見つかるとまたやり直しで、パソコンを窓から投げ捨てたい衝動にかられますが、そこは我慢して地道に改善していきます。

 

ついに完成して世に放たれた動画がこちら。

 

 

これにて、第1章「富山市ガラス美術館展覧会設営PVを解体新書する」は終了になり、次回から第2章となる「eAT KANAZAWA 2005 AWARD 募集テーマ 金沢21世紀美術館 特別賞PVを解体新書する」へと突入していきます。

 

このアワードは、2005年に金沢市が主催したものですが、金沢市文化ホールで行われた授賞式の同じ壇上では押井守氏が名人賞を授与されました。若かりし頃の(だいぶ性格が歪んでいた)僕の衝撃エピソードなども軽く交えつつ、その当時のプロジェクトは残っていないので、今回は2022年度版を、2005年版をお手本にして新しく作っていき、その様子をレポートしつつ、第2章の終わりに完成品を鑑賞するという流れで行きます。十数年ぶんの進化ポイントも見せたいと思っているのでまたお付き合いのほど、どうかよろしくお願いいたします。

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